|
分身
夏休みのある日、少女は勉強の合間をぬって隣町まで買い物に出かけた。近所の人に見られないように、クラスメートに会わないように。髪をまとめて少しだけ化粧をして出来るだけ大人っぽい服を着て繁華街を歩いた。
こんな緊張する買い物、初めて
ここなら、買いやすいかな…
若い娘たちで賑わったファンシーショップで知ってる顔がいないのを確認してから、文房具類と一緒に可愛いキャラクターのついた避妊具を買った。
気をつけなくちゃ。今、引ったくりにあったら大変だわ。警察で荷 物を広げられて、「これはあなたのですか？」なんて聞かれたら …。あああ恥ずかしい…
少女は頬を染め荷物を抱えながら帰路を急いだ。
所は戦国。
いつものメンバーで旅が続く。
異国の服を纏った少女はどきどきしながらスカートのポケットを押さえた。そこには現代にもどった時に買ってきた避妊具が忍ばれている。
…犬夜叉は着けてくれるかな
説明するの、大変そう…
弥勒さまなんか、ひと目でこれが何か分かったみたいだけど…
ハンカチを取り出したときに不覚にも落としてしまい法師に拾われたのだ。
「かごめさま、何か落とされましたよ。」
「きゃっ！」
「ほほう…。これは…」
「あっ、ありがと、弥勒さま。返してっ。」
「かごめさま、私にひとつゆずっていただけませんか？」
「えっ…。」
「ぜひ。」
にっこりと微笑む法衣の男。
これが何だか、分かったの…？
「弥勒さま、こっ、これはね、怪我をした時に使うものなのよっ。」
「ほう。…それで、譲っていただけるので？」
…バレてる
やっぱ、弥勒さまってすごい人だわ…
誰と使う気かしら…珊瑚ちゃんかな
あれ？弥勒さまって、子供が欲しいんじゃなかったっけ
ある夜。
小屋で二人っきりになったとたん半妖の少年に求められた。
犬夜叉と抱き合うのは、もうこれで４…回めだけど、なんか
どんどん大胆になってくるというか…ちょっと強引だわ…
最近皆が気を使ってわざわざ二人きりにしてくれてるような
気が する。この間、首筋に痣をつけてしまったせいかな
やっぱ、皆にばれてるのかしら。は、恥ずかしい…
肩に触れた犬夜叉の手が頬に伸びる。
顔を上げられると、そっと唇が近づいてくる。
「あっ犬夜叉…。ちょっと、待って…。」
「ん？」
おずおずとポケットから避妊具を取り出す。
「あのね、これ…。」
「ああ？」
「着けて欲しいんだけど…。」
「つけるって、何処にだ？」
「あの…。」
「なんだよ。」
「えっと…。」
「はっきり言えよ。」
「もう…。」
かごめは犬夜叉の首筋に手をまわして自ら接吻を求めた。
「ん…。」
柔らかい舌が溶け合い先端をつつきあう甘い口付けを交わす。
唇がそっと離れると、お互いのうっとりとした瞳が見つめあった。
「あの、だからね、…ここに…。」
ためらいがちなかごめの右手が、彼の袴の上からすでにその手に納まりきれないほど隆々と立ち上がったものに触れた。
「なっ……！！！」
犬夜叉の顔がみるみると耳まで赤く染まる。
「こっ…！！」
一歩、後ずさる。
「ここって、ここか。」
「…うん。」
「なっ、何なんだよそれは。何でそんなもん着けるんだ。」
「犬夜叉は、赤ちゃん欲しい？」
「ああ？何言ってんだ。おまえ。」
「赤ちゃんよ。欲しいわけじゃ、ないでしょ？」
「考えた事ねえ。」
「でも、今のままじゃ、出来ちゃうかもしれないじゃない。」
「男と女が乳繰り合ってりゃ、いずれガキが出来んのは当たりめえじゃねえか。」
「…そんな下品な言い方、しないでっ。」
「下品って、なんだよ。当然の事だ。」
「だって…。じゃあ、あんたは赤ちゃんが出来てもいいと思いながらあたしと抱き合ってたの！？」
「なんだよ今更。ガキが出来たって、無事に生まれるかどーかわかんねえよ…。」
ああ、この時代は御産が大変だったんだっけ…。出生率は半分くらいか。
無事に生まれたとしても、病や飢えであっという間に命を落とす。
生まれるも死ぬも、すべて運命にまかせる。
だから、授かる命はとても大切なんだ。
この時代の人は、避妊なんてあまり考えないのだろう。
「でもっ。今、出来ちゃったら困るでしょ？」
「なんでだ。」
「なんでって、おなかが大きくなっちゃったらもうかけら探しの旅も出来ないし、奈落とも戦えなくなっちゃうわよ。」
「あ…。」
考えて、無かった。というふうに目が見開かれ、やがて金色の瞳が少し曇った。
「そうだな…。」
かごめの言うとおりだ。奈落との命がけの戦いの最中に
ガキなどいたら弱点にしかならない
「これはね、赤ちゃんが出来ないようにするためのものなの。」
「これを着ければ、ガキが出来ねえのか…。」
「うん。」
「そうか…。」
少し俯いて、呟いた。
「ぜってえにガキが出来ねえってのも、寂しいもんだな…。」
犬夜叉の心がざわつく。
…かごめは、おれの子など生みたくねえってのか？
半妖のおれの子など…
違う。かごめはそんな事言ってない。今は、と言ってるだけだ
おふくろは、どうだったのだろう。妖怪の子を生んだおふくろ…
おれなど欲しく無かったか
獣の耳をもつ子を生んで、どう思ったのか
疎ましく思っただろうか
無力な赤子の首を折ることなど、女でも片手で出来るだろう
でもおふくろはそれをしなかった
おれはここにこうして生きている
だからおれは、せめておふくろにとっては
望まれてここに有る命なのだと
信じたい…。信じたいのに
尋ねたくとも、すでに母は亡い。
「…寂しい…？」
「………。」
目の前にいる女にとっても。
いや
かごめのそばにいるとおれは…
おれが生きている事をここにいることを
かごめが望んでくれていると信じていられる
おれは、ここにいてもいいんだ
ここがおれの、居場所だ…
「…しょうがねえな。」
「うん…。」
「つけりゃいいんだろ。で、どうやって着けるんだ。」
「あ、えっと、あたしが着けてあげる。」
「誰が何処に着けるって？」
「えっ。」
かごめの顔がみるみる赤く染まる。
「そんなんで出来んのかよ。」
ふっと、小さな明りが消された。
優しく抱きしめられ、深い口付けを交わす。
あっという間にセーラー服を脱がされた。ボタンの外し方ももう手馴れたものだ。
壁に押し付けられて、彼の唇が首筋を這う。
ホックを外されたスカートが重力に従ってそろそろとずり落ちる。
下着を外すのももどかしそうにブラの紐に手をかけ片方をずらした。
乱れた下着姿がかなり恥ずかしい。
彼はひとつだけこぼれた胸の先端を吸いながらゆっくりとショーツの中に右手を滑り込ませた。
犬夜叉の指がかごめの敏感な箇所を弄る。
「あっ…。」
何処が一番感じるのか、すっかり知られてしまっている。
泉から蜜が湧き出で、身体が溶ける。
「痛っ…」
「悪ぃ。」
鋭い爪が当たってしまった。
「大丈夫か？」
「うん…。」
犬夜叉は恭しく跪くと、ショーツを外し花弁を広げて痛めた箇所に舌を這わせた。
…大丈夫だ。怪我はしてねえ。
そのまま彼の舌の動きが早くなった。
「あ…。」
何度経験しても慣れない。やっぱり恥ずかしい。そして心地良い。
厭なのに、嬉しい…。
「あんっ…。」
立ったまま足を開かされてこんな格好で喘いでいる自分が…ものすごく恥ずかしい。
もう
犬夜叉の、ばか
あたしにばかり、こんな恥ずかしい目に合わせて…
あんた、遊んでるんでしょ
「ああっ。」
快感のあまり足ががくがくと震える。
腰の力が抜けて立っていられない。
徐々にかごめの背が壁を滑り、床に座り込んだ。
犬夜叉はかごめの下着を全部外すと、自らも衣をすべて脱ぎ捨て胡座をかいて少女を引き寄せた。
「着けるんだろ？」
「う、うん…。」
明かりの無い小屋の中だが、目が慣れているのと差し込んだ月の光であたりがよく見える。
彼の豊かな真珠色の髪がきらきらと輝いて見事に美しい。二つの金色の瞳が月光を反射してかごめを射抜く。
華奢な少年の身体なのに均整のとれた筋肉がまるで彫刻のよう。
うっとりと少年を見つめていたかごめがふと視線を落とすと、おおきな赤黒い塊が目に飛び込んできた。
「きゃああっ！！」
思わず、両手で顔を覆う。
「なんだよっ。」
弟がいるから、初めて見るわけじゃないんだけど
やだ…。全然違う…
「早くしろよ。」
「う…。」
おずおずと手を伸ばす。
そっと、触れると。
ぴく。
微かに、動いた。
「きゃあっ！」
「おい。」
「い、生きてる〜。」
「何、言ってんだ。おまえ。」
かごめは再び手を伸ばす。
両手でそっと包むと、生暖かくて湿った硬いものが更に硬くなった。
ゆっくりと動かしてみる。少し、濡れた。
…慣れてくると、なんだか、面白い…
かごめは顔を近づけると、その先端をそっと舐めた。
「うっ。」
彼の身体が強張るのがわかる。
そのまま、口に含んだ。少し、塩味がする。
「こっ、こら、かごめっ。」
舌を動かし、そっと吸ってみる。
「おいっ。かごめっ…。はっ…」
ほんとだ
犬夜叉のこんな声を聞くのも、心地良い
「気持ちいい？」
「ば、ばかっ。早く着けろ！」
「ん…。」
一度、学校で習ったのよね。ええっと、どっちが裏だろ…
するするとかぶせて先端をつまんで空気を抜く。
これでいいはず。
「…どう？」
「なんか、妙な感じだ。」
「嫌？」
「しょーがねえだろっ。」
そのまま、押し倒された。
「あっ！犬夜叉…。」
彼が入ってくる。
少し痛い。
でもすぐに心地良い刺激に変わる。
そして二人で、激しく求め合い与え合い快感を高めあった。
あたしだって、こんなの着けたくないけど
なんだか、隔てられているみたいで…
でも、仕方ないわね。今は
―ぜってえにガキが出来ねえってのも、寂しいもんだな…―
もしかして犬夜叉、ほんとはものすごく子供が欲しいのかな
小さな自分の分身を腕に抱いて、いつか永遠に孤独になるかもしれない不安から開放されたかったのかもしれない…。
「かごめ、いつか…。」
「…うん…？」
「なんでも、ねえ…。」
あんな、弥勒みてえな台詞、言えねえや…
いつか、おれの子を…。とは
（終） |
