さらさら さらさら さらさら さら 「ねえ…。」 「ん？」 ずっと、一緒に いれたらいいね 「またこうして、一緒に桜を見れたら…いいね…。」 「…ああ。」 さらさら さらさら さらさら さら 降る花びらを両手で追う少女の髪を、そよぐ春の風が優しく揺らして柔らかそう な頬をくすぐる。 異国の着物の隙間からも自在に進入しその肌を撫でる風を見た時、ふと気付いた。 風を羨んでいる、自分に。 「きゃあっ！！」 「かごめっ！！」 突如、桜木の根に躓いた愛しい少女を抱きとめて 二人一緒に敷き詰められた薄桃色のはなびらの中に倒れた。 桜の木々に囲まれて少し窪地になった空間は静けさに満ちていて恋人達が語らう には絶好の場所だったのに、悲鳴に続いてどさりと騒々しい音をあたりに響かせ た。 愛しすぎて 愛しすぎて あまりに 大切すぎて 触れることさえ、出来なかった。 一斉に宙に舞ったやわらかな花びらがゆっくりと漂いながら、ふたりを桜色に染 めてゆく。 さらさら さらさら さらさら さら 傷つけたくなくて 泣かせたくなくて 見ていることしか、出来なかった。 いままで。 「ご、ごめんね。犬夜叉、大丈夫…？」 でも 花が自ら寄り添って 触れて欲しいと言うのなら もちろん やぶさかでは、ない。 さらさら さらさら さらさら さら 少女の下敷きになった銀髪の少年は放心したように揺れ落ちる花びらを見ていた。 「犬夜叉…？」 触れて欲しいと…言うのなら 実際花は何も言っていないのだが、少年にはそう言われたとしか そうとしか、聞こえなかった。 彼は心配顔した少女の瞳を見つめると、少し拗ねたように睨み 「…おまえから、飛び込んできたんだからな。」 こう呟きかごめを抱きしめた。 「えっ…？」 くるりと、二人の身体が反転して上下が入れ替わると 目の前にあった金色と銀色に、視界をふさがれた。 「んっ…」 唇から暖かいものに進入され口内を支配された。 目を閉じると感じるものは、彼の身体の重みと熱と それ自体が別の生き物のように行動する情熱的で熱い舌。 そして、そよ風とかすかに甘い花の香り。 彼は唇をそっとはずすと、そのまま頬から耳元、そして首筋に口付けを施した。 「あっ…」 くすぐったいような妙な感覚に身体の奥の芯が、ぞくりと震えた。 散歩をかねた花見に恋人を誘ったのは自分だけれど、こういう展開になるとは思 ってもいなかった。 じれったいほどシャイなひとだったのに、どうして今はこんなに違うの？ どっちが…ほんとなの…？ 犬夜叉の銀糸と紅い衣の間から見えるのは一面の白に近い薄桃色の花。 「ね、ねえ。犬夜叉…」 「なんだ？」 「こうして寝そべって桜を見るとすごく綺麗ね。」 「そうだな。」 「一緒に桜を見ない…？」 「おれは、もっといいもん見るから。」 「あっ」 当初の目的に戻ろうとの試みは失敗。 さらさら さらさら さらさら さら そよ風に花びらが遊ぶ意外はあたりには静寂が訪れているのに 耳元に届く吐息は荒々しさを増していった。 「ちょ、ちょっと、まって。犬夜叉…。」 「うん？」 首筋に舌を這わせながらセーラーのスカーフを解いた犬夜叉が、顔を上げた。 「ここ、外だし…今は…昼間だし…あの…」 「誰もいねえし、誰も来ねえよ。ふたりっきりだ。」 「あ。」 再びくちびるを塞ぎ、有無を言わせぬままするするとかごめの纏う異国の着物を 解いた。 制服を取り払うと、躊躇う事無く淡いピンクの下着に手がかかる。 かごめは改めて緊張に襲われ身を硬くして小さな抵抗を試みた。 「や、やっ…犬夜叉…」 「ん？」 「こんな明るくちゃ…恥ずかしい…」 「心配すんな、目ぇつぶっててやるから。」 「ほん…と…？」 美しい花を前にしてそれを見ようとしないものがいるだろうか。 冷静に考えれば真意も分かりそうなものだが、かごめは少し安心してちからを抜 くと瞼を閉じた。 少女の身体を隠す最後の布をするすると外すと、横たわった桜色の美を見つめな がら犬夜叉は己の衣を紐解いた。 さらさら さらさら さらさら さら 春の風に素肌を撫でられて鳥肌のたった身体が、重たくて硬く熱い肌に覆われて 首筋から胸にかけて、柔らかい湿ったものがそろそろと這った。 かごめはかすかに目をあけると、その事実にはっと気付く。 「あっ、嘘つき！ 目、開けてるじゃないの。」 「そんなの、当たり前だろ。」 「もう…ばか…！」 騙された少女は頬を染めて、開き直る恋人を睨んだ。 「かごめ…。」 「えっ…」 さらさら さらさら さらさら さら 「ずっと…」 ずっと ――― 彼は、みなまで言わずに みたび、くちびるを重ねかごめの視界をとざした。 さらさら さらさら さらさら さら 生まれたままの姿でいだきあったふたりを、とりまく木々はただ黙って見つめて いた。 今を盛りと咲き誇る誰もが愛でる美しい桜が、生まれて初めて嫉妬するとしたら こんな柔らかないとしみ深い抱擁を見せ付けられた時かもしれない。 さらさら さらさら さらさら さら 暖かく揺れる春の陽だまりの中で 舞い降りる薄桃色の天蓋に隠されて 木の根に背中を押されてようやく触れた おくびょうな少年が焦がれぬいた桜色の花。 |
 （終） 合作スタッフ 絵 だーくももさん 小説 かりん |
＜管理人コメント＞ これは03年の春に書いたもので、お友達のだーくももさんのイラストからおこした短編です＾＾。 「もも犬のおうち」さまで10000万ヒットのキリ番イラストが、「桜の下でつまずいたかごめちゃんが犬君の胸に飛び込んで一緒に倒れるところ」というとても微笑ましい絵だったので、皆でこの続きをリクエストしたところ、描いてくださったのがこちらの萌えなイラストでした。(*^^*) 続いてる二枚のイラストを見て、すかさず妄想が沸いてしまい、描かせていただいたのがこの「桜色」です。＾＾ももさんの絵は綺麗で品があるので、あまり邪な内容にはなりませんでした。(^^ゞ このように押しかける形でできた合作ですが、私にしてはピュアなお話が書けて嬉しかったです(*^^*)。 今回、今頃ですが容量などの問題が少し解決したのでこの機会にこちらでも飾らせていただきました。 だーくももさん、ありがとうございました。(*^^*) だーくももさんのイラストサイト「もも犬のおうち」様には犬リンク１から飛んでいけます。 |
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