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山の天気は変わりやすい。 さっきまで晴れていた空から打って変わって 激しい雨が降り始めた。
銀髪の少年は恨めしげに急速に暗くなってゆく山の空を見上げた。雨は止みそうに無い。
急な激しい雨にやむを得ず 偶然見つけた小さな山小屋に身を潜めた。
二件の妖怪退治を依頼され弥勒たちと別行動をとったのだ。 すばしこく逃げ回る妖に梃子摺ってしまったのが口惜しい。 文句を言っても仕方が無い。夜の山道は危険だ。 かごめを連れている以上、今日はこれ以上動かない方がいい。
かごめはリュックからタオルを出して髪を拭いながら言った。 粗末な小屋だが時々村人が使っているのだろう。 山仕事の道具類が並んでいるほかは小奇麗に手入れされている。
「え…。」 「脱ぎな。」 「えっ…！？」
突き出した。
これでも着てろ！」 「あ、うん。ありがと…。」
夏とはいえ濡れた服は容赦なく体温を奪う。 かごめは火を熾す犬夜叉の背中を確認してから制服を脱いだ。 火鼠の衣はそれ自体が妖力を持っているせいか表面が少し濡れているだけだ。 暖かい… 彼の温もりが残っている衣を素早く身に付け、袖を帯のように後ろで結ぶと濡れた制服が 早く乾くように火のそばに広げた。
「うん…。」 また明日もかけら探しの旅が続く。体力を保つためにも眠れる時に眠らなければいけない。 分かってるけど、せっかく二人きりになれたのだ。 もう少し話がしたい。 「ちょっと、火に当たってもいい？」 「…おぅ。」
かごめは犬夜叉の隣に座って火を眺めた。
ぱちぱちぱちぱち ゆれる炎を眺めているのは飽きないし落ち着くものだ。 ざっ 時折激しい雨が小屋を打ちつけた。
「ああ…。」 「旅の始めもこんなだったね。」 「…。」 「あの時は冥加じいちゃんがいたっけ。」 「…。」 「いろいろあったけど、仲間が増えて良かったわよね。」 「…。」 「…犬夜叉？」 「……。」
でも、二人っきりの時くらい何か話してくれてもいいのに…。
その肩に触れた。
「えっ？」 「…おれに、近づくな！」 「…！？」
「え…。」 「こんなとこで男と二人きりになったら、もっと警戒しろよ。」 「け、警戒だなんて…。」
くい、と腕を引かれたと思うと唇が重ねられ、強く抱きしめられる。 かごめの耳元で、犬夜叉は搾り出すようにずっと秘めていたその想いを言葉にした。
遠ざけるように突き放された。 「きゃっ！」 床に倒れ込んだかごめに背を向けて低く呟く。 「早く寝ちまえよ…。」 「犬…夜叉…」
胸の鼓動が大きく早くなった。
桔梗じゃなくて、あたしを…？
犬夜叉の想いに…応えたい。 ずっと犬夜叉のそばにいると決めた時から この日が来る事は予感していた。 不安はもちろんある。 でも,、なんだか嬉しい。 犬夜叉の気持ちが泣きたいほど嬉しかった。
びくっ 広い肩と獣の耳が微かに動く。
「…！！」
「おまえっ。どういうことか、分かってんのか？」
舌を絡ませた。 獲物を捕らえた野犬のように少女を押し倒して覆い被さり顔をうずめ首筋に荒々しく甘噛みと口付けを繰り返す。
もうだめだ もう 止められねえ…
でもその可憐な花を、乱暴に摘み取ってしまうことなど出来なかった。かごめはきっと泣くだろう。泣かせたくない傷つけたくなど…。
この細く小さな身体は折れてしまうだろう。 乱暴にそのすべてを奪ってしまいたい衝動をかろうじて抑える。 代わりに、一瞬でも離したらすべて消えてしまう幻を抱きしめているかのように火の付いてしまった熱い想いが少しでも静まるまで 何度も深い口付けを繰り返した。
今日はどんな下着だったっけ？ 白だったっけ… もっと、可愛いのを着けてくればよかった…
かごめの着た緋色の衣の結ばれた袖を解きはじめた。 かすかに触れるような口付けを交わしながら 少女が纏う白い大輪の花のような見慣れぬ下着を器用に 外していく。
少年は神々しいものを見たようにしばし言葉を無くしてその姿に目を奪われた。
「い、いやっ！見ないで…！」 両手で顔と胸を覆い身をよじった。 「かごめっ。」
力強い両腕に抱きしめられ耳元で優しく囁かれる。 世辞など言えないひとだ。 だからそれは本心からの言葉なのだろう。 かごめの全身を走っていた力が溶けて、そのまま彼の腕に 身を任せた。
あらためて横たえた少女を抱きしめた。 肌と肌が触れ合い温もりを与え合う。 ずっと探していた水を見つけた砂漠の旅人のようにその 桜色の肌を貪る。 かごめの優しい匂いを感じて溶けるように身体が痺れた。
母も、こんなに柔らかかったのだろうか。 少年は記憶の奥底を探った。 もう朧げな姿しか思い出せないそのひとの記憶を。
犬夜叉の体温も重みも、這わされる唇も舌も甘噛みも すべてが心地良い。 時々立てられる爪も腕をきつく捕まれて痛みを覚えても、その想いの激しさを知り悦びに震えた。
どんなに甘い言葉で飾っても、これから行われるであろうことが生殖行為であることに変わりは無い。 子供を望んでいるわけでない以上、気をつけなければいけない。 前回の生理から…２４、２５… オギノ式が完璧でないことは知っている。 避妊具を、用意しておくのだった。 でも…たぶん、今日は大丈夫。
なにを失い何を得るのか。 まだ知らない世界を知る事で何かが変わるだろうか？ 分からない けれど 後悔など、しない あたしは犬夜叉のことが好きなのだから。
二人の想いを包み込み雨は降り続く。
甘い声が漏れた。 それを合図にして今まで闇雲に口付けと甘噛みを繰り返しかごめの体温を少しでも感じようと掌を這わせていた犬夜叉の愛撫が明確な意思を持ったかのように変わっていく。
少年は生まれたばかりの赤子のようにそのひとつをそっと吸った。 もうひとつの蕾を指の腹でころがす。 初めて感じる快感がかごめの全身を走り鳥肌が立った。 自分で触っても、何も感じなかったのに。 愛しいひとに触れられるというのはこんなにも違うものか。
力を入れすぎないように、 繊細なガラス細工を扱うようにしっとりとした愛撫を繰り替えす。
少女の肌をさらに敏感なものへと変えていった。
足を立てられると太股の内側を暖かい舌が這う。
かごめの身体が大きく脈打つ。 犬夜叉の両手が濡れた秘部に触れると花弁を押し広げられその舌が透明な蜜を拭った。
彼は信じてくれただろうか？
落雷に打たれ電流が通り抜けたように手足が痺れ痙攣した。
彼に、知られてしまった。 身体は否と言ってはいないこと。 むしろその熱い舌を求めていること。
花芯を嬲る。
恥ずかしい…。消えてしまいたい。もっと触れて欲しい。 矛盾した心と身体が火のように熱い。 それは羞恥のせいか快楽のせい？
揉みしだく。
頂点に達した。 激しい官能に襲われて、受け止められずにいる小さな身体がそこから逃れようと必死でもがく。 逃れられるはずも、無い。
やがてこらえきれずに抑えていた感覚を開放して 快楽の渦に身を堕とした。
汚してしまいたい恥辱にまみれさせてしまいたい 残酷な気持ちに支配されながら甘美に高鳴る声を聞いていた。
優しく撫でていった。
袴と下帯を解いた。
恍惚とした夢に浸っていた少女は近くで布の落ちる音を聞いた。
犬夜叉の声が聞こえたと思った瞬間、下腹部に激痛が走る。
痛い！ 痛い！！
ママ！！ ママあっ！！ 激しく揺らされながら声にならない叫びで母を呼んだ。
隣のクラスの女の子が自慢げに話している声が聞こえた。 あれは、水泳の授業の更衣室でのこと。 『始めはちょっと痛いけどね。すぐに慣れて、気持ちよくなるよ。』 少女達の羨望の眼差しが彼女に注がれていた。
ものすごく痛いじゃない！ やっぱ人によるのかな？
褥にした緋色の衣の下で粗末な床が悲鳴を上げる。
強い力で両肩を押さえつけられて身じろぐことさえ出来ない。 ただ歯を食いしばって痛みに耐え喘ぐ。
ふいに恐怖がわき起こった。
助けて 助けて！ママ！ たすけ… 犬…夜叉…！！
いつもは無条件で自分を守ってくれていたひとが。 今は自分を傷つけている。
これが男か。 男のひとはこんなにも変わってしまうものなのか。 平気なの？平気でこんな仕打ちの出来るひとだったの…？ ねえ…
いつもの、犬夜叉だ。いつもよりずっと優しい声。
つらそうに眉をよせている。
ごめんね、犬夜叉 誘ったのは、あたしだ… あたし…
これ以上、声が出ない。
犬夜叉はさっきからかごめの血の匂いに気付いていた。
血を流させるなんて…！ すまねえ、かごめ でも 止められない どうすることも
まえよりも激しく突き上げられる。
「かごめっ！」
もう、声を殺す事も出来ずに激しい雨の音も凌ぐほど泣き叫んだ。
愛しいひとの腕の中にいるというのに
少しでも苦痛から逃れようと意識を別の所に飛ばして漂わせる。
大人の恋に綿菓子のような甘い夢を見ていた。 １５歳は現代ではまだ子供だ。 でも、この戦国の時代なら適齢期だ。お嫁にいく年頃…。 弥勒様の子供を生むと言った１４歳の小春ちゃん。 犬夜叉とともに生きようとした桔梗。 あたしだって、と対抗心のような気持ちから…背伸びが過ぎたか。
あたしがまだ、ぜんぜん子供だってこと… だから…
異なるものを初めて受け入れた少女の苦痛も。
やがて身体の縛めを解かれて過酷な嵐が過ぎた事を知っても 目をあけることも出来なかった。
下腹部の鈍い痛みも止まない。
唇で拭った。 瞼にも額にも、怯えて蒼白になって震えるかごめの顔に接吻を 繰り返す。
「すまねえ、かごめ…。」
おさまっていく。 そっと、身体の痛みも癒されてゆく気がした。
好きな人とだったらいいけど。 好きなひととでもこんなにつらいのだから、そうでない人とだったら もっとずっとつらいわよね…。
桔梗の知らない犬夜叉を知った事で少しだけ優越感のような 気持ちが起こる。 同時に、桔梗の深い哀しみに想いを馳せる。 桔梗も、生きている時に犬夜叉とこうしたかったんだろうな…
あたし達が帰らなくて心配してるかな。 あたしは大丈夫…。犬夜叉と、一緒だから。
静寂と、かすかに虫の声。
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