「かごめっ。」

「あっ、犬夜叉。厭よ！」

所は15歳の少女の部屋。

いつものようにかごめをベッドに押し倒した犬夜叉だったが、かごめの反応がいつもと違う。

「えっ？」

「…厭よ。」

「い、厭…？」

「そう。厭。」

「いや…なのか…？」

「うん。いや。」



「い…や……？」

だめと言われたことはあっても厭と言われたのは初めてだ。両腕を突っぱねて顔を反らして、いやよいやよも…というわけでもないらしい。日曜日の午後。かごめの家族は外出してて留守だ。障害は何もないはず。

犬夜叉はかごめの上に乗ったまま固まる。

　な、なんでだ…。かごめ…

思いもよらぬ拒絶に頭が混乱して心臓が早く鳴り響く。

「月のものはもう終わっただろ？」

「もう！ばかっ！」

かごめは頬を染めて自分の上にいる犬夜叉の胸を両手でたたく。
生理日まで知られてしまうその鋭い嗅覚には本当に腹が立つ。

　なんでだよ…。痛えのか？いや、もうあまり痛くねえはずだ…
　愛撫が足りねえのか？何が…何が厭なんだ…？…かごめ…

いくら必死に考えても答えが出ない。

「体位が気にいらねえのか？」

「そんなんじゃなくて、あたしは、あんたともっと…。」


「どんな体位がいいんだ。言ってみろ。」

「人の話を聞きなさいよっ！」

犬夜叉は呆然として呟く。

「…何で厭なんだよ。わかんねえよ…。」


「たまには気分が乗らない時だってあるのっ。」

　あたしは、たまにはもっと普通の恋人同士みたいに
　デートしたりビデオ観たり話をしたり、したいのに…

「かごめ…。」

犬夜叉はかごめから離れるとベッドに正座して手を膝の上に置く。
神妙な面持ちで上目使いでかごめを見つめながら何かを覚悟するかのようにそれを聞いた。

「おれのことが、厭…なのか…？」

　い、犬夜叉…？

答えを聞くのがとても辛そう。今にも泣き出してしまいそうな、瞳。
微かに震えて死刑の宣告を待つかのように、かごめの答えを待つ。

「あ、あんたのことが、厭なわけじゃないわ。」

「…ほんとか…？」

「本当よ…。」

少しほっとしたよう。でもまだその表情は硬い。

「じゃあ、何が厭なんだよ…。」

「ねえ、犬夜叉。あたし、あんたのこと好きよ。でも、たまには違う事して過ごしましょうよ…。」

「…何が…いけねえんだよ…。」

「犬夜叉…。」

耳をたらして俯いたまま犬夜叉は動かない。
かごめに拒絶されてしまったショックで金色の瞳は暗く陰り顔色も蒼くなったまま。

なんだか犬夜叉がいつもより小さく見える。

　犬夜叉…なんでそんな顔するの…

かごめはいたたまれなくなる。

「嘘、よ…。」

「……。」

「嘘よ。厭だなんて嘘。ごめんね、犬夜叉。」

「……。」

「しよう。ね？犬夜叉。あたし、してほしいなあ…。」

「……。」

「ねえ、犬夜叉…。」

「……。」

いくら声をかけても、犬夜叉は動かない。
萎縮してしまった傷つきやすい魂は容易に心を開いてはくれない。

　犬夜叉…どうしちゃったのよ…

かごめは犬夜叉の首に手を回して、唇に接吻した。
そっと銀糸の髪を撫でながら何度も繰り返すと、やっと舌を許してくれた。

「ね？犬夜叉…。しよう…。」

「……。」

「犬夜叉…。」

「…いいのか…？」

「うん。」

「…厭じゃ…ねえのか…？」

「うん。厭じゃない。」

「…ほんとだな？」

「うん。」

ようやく、犬夜叉の腕がかごめをそっと抱きしめた。

苦しいくらい、強く強く抱きしめられる。

そのままゆっくりとベッドに倒れた。

かごめの瞳を見つめながらもう一度確かめる。

「ほんとに厭じゃねえんだな…？」

「うん…。」

「かごめ…。」

深い深い口付け。

　ああ、またいつもと一緒だわ…
　犬夜叉。あたし、あんたとこうして抱き合うのも好きよ
　すごく優しくしてくれるし、愛されてるのが伝わってきて
　とても幸せな気分になる
　でも二人きりになるたびこればかりじゃ
　なんだか身体だけの付き合いみたいでちょっと寂しいのよ
　普通の恋人同士って、こうなの？違うわよねえ…

犬夜叉の愛撫が、いつもと違う。いつもよりかなり情熱的だ。
指と舌で最初の絶頂を迎えたかごめの視界が、くる、と反転した。
うつ伏せになると腰を持ち上げられて後ろから挿入された。

「ああ…あっ！」

いつもと違う所を刺激され快感が高ぶり手足が痺れる。

後ろから抱きしめられ背中を舌が這う。
くすぐったさが心地良さに変わる。

胸を揉みしだかれながら突き上げられる。

「あっ！あっ！あっ！」

肩をつかまれて激しく揺らされると胸の先端がシーツにこすられ刺激で快感がさらに増す。

「ああっ！…あん…。」


シーツを鷲掴みにして激しい官能に耐える。

　なんだかこれって…
　前に動物園で見かけた豹の交尾みたい…

横たわる二頭のしっとりとした営み。
秘め事を目撃してしまって無性に恥ずかしくなった。

かごめの感覚が溶ける。

全身の細胞のひとつひとつがまるで野生の雌になってしまったかのよう。大自然のなかで本能のまま抱きあっているみたい…。

意識が溶ける。

果てしなく広がる草原の上で寄り添う雄と雌。野生の命…。

気付くと、絶対に離したくないと言わんばかりに強く抱きしめられていた。顔中に優しい接吻の雨を浴びる。

「…良かったか？」

「…うん…。」

「おまえなあ、なんかあったらすぐおれに言えよ。おれは言われなきゃわかんねえんだからよ。」

「ん…。」

「いつも同じなのが気に入らなかったんなら早く言え。」

「え…？」

「おれはおまえの顔が見えるいつものがいーんだけどよ。いつも同じじゃ飽きるよな…。」

「ねえ…。」

「次はもっといろんなの試してやるからな。どんな体位でもやってやるぜ。かごめ。」

「犬夜叉、だからね……。」

「ん？」

「あたしは体位が気に入らなかった訳じゃないんだってばっっ！！おすわりっ！！」

「うわああっ！」