ふうわりと、いつもそばにある優しい匂いに包まれた。

唇にやわらかな感触を感じ目を開けると、愛しい娘がそこにいた。

彼女は大きな瞳を艶やかに潤ませて、熱に浮かされたように頬を染めて、こう言った。

「し、て…？犬夜叉…」

たしかに、こう言った気がした。その可憐な唇もこのように動いていた。

それでも、何を言われたのか、理解できなかった。

「え…」

寝ぼけた頭を無理矢理起こして、言葉の意味を知ろうと勤めるものの、間を置かずにその白い手が帯の下の下腹部をそっと弄る。

「おねがい…。」

「か…ごめ…？」

犬夜叉は少女の華奢な手が己の袴の帯を解きはじめるのを、信じられない気持ちで見ていた。

「犬夜叉のが…欲しいの…。」

下帯も緩め目的のものを取り出すと、身をかがめた少女の愛くるしい唇がすでに張り詰めた欲望の先端をそっと包み込んだ。

「かっ…かごめ…！」

耳の奥がぞくりと騒ぎ、全身を稲妻が通り抜けたように四肢が震えた。

「はあっ…！」

かごめの暖かで柔らかな舌にくすぐられた自身は一層堅く膨張しぐっと天を仰いだ。

　どうしたんだ？かごめ

　なんでこんなに…

　いつもは誘っても…恥ずかしがるくせによ

少女の舌は美味なる菓子を味わうように敏感な部分を撫でさすり、つう、と吸うと小さく喉を鳴らした。

「はうっ…あ！」

ぱち、と野営の薪が音を立てて紅い炎が揺らいだ。

深夜の浅い眠りのさなかにふいを突かれて、仰け反りそうになった身体は背にしていた樹に阻まれた。

かごめに誘われているという事実が、いまだに信じられなかった。いつもは野外などでは嫌がるものを。

今夜のかごめは、かごめらしくない。

いつも自分から誘っていた。こういう事は男からというのは世の常だ。誘ってもなかなか色よい返事はもらえず、たいていは自分が少し強引に押し切るかたちになる。

まださほど回を重ねたわけでもないが、それでも、いつまでも少女らしい初々しい恥じらいを持つかごめが無性に可愛いくて愛しかった。


だが、愛し合うことの快感を知った身体なら、女といえどもたまにはかごめから誘ってくれてもいいものを、とも思っていたのだ。

昼間はあどけない少女の顔をしていたのに、こうして夜に妖艶な娼婦の顔を見せてくれたことはこの上もなく嬉しかった。

それでもやはり、戸惑いは隠せない。

「いい…でしょ…？」

かごめは自らの下着をするりと足の先から落とし、犬夜叉の腰にまたがると、すでに濡れた花びらを指で広げてそそり勃つ肉棒を支えてそろそろと自らの中に埋め込んだ。

「あ…！」

暖かい肉の中に根本まで挿入されると、息をつき、快感に震えながらお互いの舌を求めて貪るような口付けを交わした。

「動い…て…。」

「こう…か？」

躊躇いがちに、でもいつものように腰を揺すりあげた。

「あ、はっ…。」

弾むように上下に揺れる恍惚としたかごめの顔を見つめながら、もう様子が違う事も普段との違和感も何も考えられずに、少女の着物と下着をめくり柔らかな胸を揉みしだいた。

「あ…もっと…」

「かごめ…。」

耳元でかごめの甘い声に囁かれて、こそばゆそうに獣耳をひくつかせた。

やっぱり求められるのは嬉しい。男冥利に尽きるというものだ。普段は何かと怒らせてばかりだが、こうして自分にも好きな女を悦ばせることが出来ると自信を持てる。この可愛い女の為なら、なんでもしてやりたいと心から思った。

彼女を草の上に倒して覆い被さり両肩を掴み肌蹴て露になった胸を吸いながら夢中で腰を突いた。

「ああんっ！！」

「こうだな？」

むーどやら、でりかしーというやつを求められても困るが、こういうことならまかせておけとばかりに、加減を忘れて激しい動きを繰り返した。

「あっ！あ！！」

「これでいいか？」

着物を脱ぐ事も、脱がせる事ももどかしく、ただ一部分を結合させ野性的に欲望の欲するまま交わった。

「ああっ！！ぁ――！！！」

狂い咲き乱れた女の喉奥から、ひときわ高い嬌声が闇夜に響いた。

深い夜、眠る森の静寂の中一組の男女の荒い息遣いだけが張り詰めた空気を揺らしていた。

「どうしたんだ…？おまえ…」

息を整えながら妖艶な女の顔を覗き込み、いつもより情熱的な訳を知りたかったが、

少女の紅をさしたように紅い唇から漏れたのは、またしても意外な言葉だった。

「ねえ…もういっかい…」

「えっ…」

かごめから二度目を求められたのは初めてだ。彼女の体力では、一度が限界だろう。半妖の自分の相手ならとくに。

「おねがい…あたし、なんか熱くて…変…で…」

「お、おう。まってろ。」

俯きかけた象徴を、右手で扱いて鼓舞すると、またみるみると勃ち上がる。

まさか、知らずに媚薬でも口にしたのだろうか。

いや、女にもこういう、無性に男の肌が恋しくなるときがあるものだろう。今日は前戯もしていないし、ふいを突かれていつもよりも早く終ったから足りなかったのか。

そういうことなら満足させてやらねばなるまい、と男の意地にかけても思う。

少女の身体をくるりと返すと、腰を持ち上げて緑の着物をめくり桃の谷間の中心に後ろから挿入した。
膝を立たせ腰を固定させ前後に突き動かす。

四つん這いになったかごめから零れた柔らかな乳房が躍るように揺れて、ぱんぱん、と肌と肌が打たれる音とぐしゅぐしゅという愛液の悲鳴が周囲に木霊する。

「あっ！！ああ…犬夜叉あっ！」

こんなに激しく突いたら、いつもは根をあげるかごめが、唇から一層の歓喜の嬌声を奏でた。

あふれてくる精液にすべりが良すぎたが、それ以上にぎゅっと締め付け吸盤のように吸い付いてくる熱い肉壁。

髪を振り乱し、肌を紅に上気させて汗を滴らせ悦楽を全身で露にする女の媚態が、一層犬夜叉の雄を駆り立てる。

ともに生身のまま極楽へと辿り着く為に、妖婦の求めに応じ荒々しく攻め続けた。

「…かごめっ…！！」

「犬夜叉？」

二度目の精を放ったとき、聞きなれた声を耳元で聞いた。

「あ…？」

「かごめさまがどうした。」

「え？」

たった今かごめと絶頂を迎えたというのに、なぜ弥勒の顔が目の前にあるのか分からなかった。

ぱちと音を立てて炎がくすぶり黄色い火花が小さく散った。

そのむこうでは、今の今まで激しく愛し合い官能に震え喘いでいた少女が寝袋の中で幸せそうに寝息を立てている。

自らから発せられる刺激臭と、ぐっしょりと塗れた下腹部の冷たさを感じて、犬夜叉はすべてを理解した。

「なにやら楽しい夢を見ていたようだな。」

「なっ…！」

犬夜叉は心を落ち着けるように一つため息をつくと、無言で立ち上がった。

「どこに行く？」

「…。」

「沢で水浴びか？」

「うるせえっ！」

さりげないからかいの言葉を振り切って、何も知らずに眠るかごめの顔をちらと視界に留めてから沢に向かって歩き出す。

　夢…だったのか…　そりゃ、そうだよな

今しがたの心地良い感触を思い浮かべて、ほうっと溜息をこぼし

　夢だったんなら

　遠慮しねえでもっとすげえことしちまえば良かったな…

そして、歩きながらくすりと笑った。

　あんなかごめも…いいな

　　いつものかごめも、いいけどな