夜もすっかり更けた頃。
ここは灯りの消された高校生の少女の部屋。

ベッドの上には一組の男女が横たわっていた。
少女はすでに下着まですべて剥ぎ取られ白い肌を晒している。
寄り添っているのは紅い袴を身に着けた長い黒髪の少年。

少年は少女の耳元でそっと囁く。

「ここ…か…？」

「あっ…。」

犬夜叉の右手の中指が優しくかごめの秘部にある花芯をとらえ指先が微かな振動を与える。

「ああっ…。」

「触って欲しいとこ、言えよ…。」

耳朶を甘噛みし、口付けを繰り返しながら敏感な箇所を摩る。

「ここだな…？」

「…あんっ…。」

かごめは返事も出来ずに四肢を震わせながら、彼の指の動きに神経を集中させた。

「ん？」

焦らさない程度で激しく感じさせない程よい微かな愛撫が続けられる。

「ああ…。」

なかなか絶頂は迎えない代わりに、永遠に快感を味わっていられそうな緩やかな刺激。


かごめは、天国にいるような心地良さを感じながらさっきから上がりっぱなしの心拍数を思う。



　これ、カロリー消費量どのくらいなのかしら…
　痩せたりして…。

最中に死んでしまう人がいるというのも頷ける。


　心臓が弱かったら気をつけなくちゃいけないわね
　あたしは健康で、よかったけど…

「ここも…か？」

彼の右手の中指があふれる泉の奥底にそっと沈んでいった。

「あっ…。」

かごめの中でそっとかき回す。

「…どうだ…？」

「あん…。」

そっと引き抜き、薬指もあわせて沈み込ませる。

「ああっ…。」

奥まで行き着くと、熱い内壁をぐるぐると弄る。

「いい…か？」

「…あ…んっ…。」

犬夜叉は二本の指が時折、きゅ、と締め付けられるのを感じながらさらに続ける。




「ぅうん…あん…。」

指に甘露を絡ませて滑らせながら親指の腹で熟れた花芯をそっとつつく。

「あっ…あ…！」

かごめは手足をわななかせながら打ち寄せる激しい官能に耐える。

腰が痺れ、とくとくと音が聞こえてきそうなほど蜜が流れ出で
しっとりと濡れたシーツが肌に触れてひんやりと冷たい。

鋭い爪が無いからこそ出来る指での愛撫。
このふだん乱暴で粗野な男になんでこんな繊細な愛撫が出来るのかと不思議になってしまう。

今夜は月の無い朔の夜。
かごめの家族は福引で当たった二泊三日の温泉旅行に出かけている。かごめの分の招待券もあったが、若い娘としては恋人との逢瀬を優先してしまった。
夏休みの宿題が残っているからという口実で、自分は行かないと言った時の母のがっかりした顔を思い出して心が痛んだ。

　ごめんね、ママ
　今度埋め合わせするから…

彼は左腕をかごめの肩の下から回し左胸の蕾をつまむ。
同時に花芯と内壁を攻める右手の動きが徐々に速くなった。

「ぁああああっ…！！」

指だけで最初の絶頂を迎えた。
ぐったりとした少女の耳元で彼が囁く。

「次は舌だけで極楽に行かせてやるぜ。かごめ。」

すぐさま、白い肌を柔らかい舌が這う。

「犬夜叉、ちょっと…休ませて…。」

なんとか懇願するが

「遠慮すんなよ。」

どうも正しく伝わって無いらしい。

「遠慮なんかじゃ…あっ…。」

肌に這わされた熱い舌が、胸の蕾を捕らえた。

「せっかく爪も牙も無いんだ。いつもは出来ねえことなんでもやってやるよ。」

そう囁かれると、紅く染まっていたかごめの顔が青くなった。人間の犬夜叉と抱き合うのは嬉しいけど、これでは今夜は眠らせてもらえそうに無い。
昼間無理矢理仮眠させられたのはこのためだったのか、と思った。

自分のためにしてくれているらしいのだが、これでは体力が持つかどうか自信が無い。

　ー下半身だけで女人を繋ぎとめておけると思っているのか？ー

犬夜叉は以前弥勒に言われたことを気にしていた。
祭りや花簪の件で、かごめを喜ばせる方法は他にも沢山あるらしいと分かった。
分かってはいても、すぐさま自分を変えられるものでもない。
犬夜叉はとりあえず己の得意分野をさらに極める事にした。　
体力なら誰にも負けない。

でもいくら精力に自信があっても、かごめが悦んでいなければ意味が無い。人間の姿のときは半妖の時に比べて体力はかなり落ちるが、かえってかごめにあわせることが出来て好都合というものだ。とはいえ月に一度しかない機会であるこの日に現代で二人きりになれることはなかなか無い。
今回ようやく訪れたチャンスに俄然張り切る犬夜叉だった。

　けっ！下半身だけじゃねえよ。全身だ！
　全身くまなく使ってかごめを悦ばせてやるぜ！

弥勒の言った「下半身だけ」という言葉の意味をはきちがえてる節もあるが彼の努力に免じて突っ込まずにいてあげることにしよう。

「あ…、ああ…。」

彼の唇が上から少しずつ下方に滑り降りてくると熱い舌を待ち焦がれている身体がぞくぞくと騒ぐ。

だがその舌は意外な動きをした。秘部を通り越し、太股の内側を丹念になでる。膝の裏側に辿り着くとくすぐったくて身体中が痺れた。

そしてふくらはぎから踝に流れつま先に行き着く。

かごめの足を引き寄せ、その指をひとつひとつ順に口に含み舌で転がしながら吸った。

「きゃっ…あ…！」

今まで感じた事の無い感覚に足が驚いて震え上がる。

「ああっ…！」

くすぐったいのか感じているのかよく分からなくて頭の中が混乱した。

お風呂に入った後なので、どこを舐められてもいいと思っていたが、まさか足の指を攻められるとは思わなかった。

「…ぅん…。」

右足が済むと、左足に取り掛かる。

「あ…ぁあ…。」

かごめの反応を確かめながら身体中の性感帯を丹念に探る。

彼の舌を知らない肌はどこにも無いくらいに舐められると

「やっぱここが一番だな。」

と呟きかごめの両足を広げ蘭のような花弁に顔を近づけ、湧き出る蜜を音を立てて拭う。

「きゃ…あっ…！」

舌先で硬く尖った花芯をリズミカルに弾き

「ああんっ…。」

そのまま左手で両足を押さえ右手の人差し指と中指を潤った源に落とし内壁を擦った。

「ああっ…あ…！」

彼は口の中でぴくぴくと痙攣する小さな突起を吸いながらさらに舌で嬲る。

「あ！も…だめ…！あっ…！」

かごめは首を左右に振って喘ぎ泣きそうな嬌声を上げた。

「あっ…あああぁっ！！」

二度目の絶頂。

すべての力が抜けてかごめの身体は死んだように動かなくなった。

「かごめ…？」

「……。」

「おい…。」

気絶したのかと覗き込むと、傍らの少女は安らかに眠っていた。

「…くおら、かごめ。」

揺すっても起きる気配は無い。

「…しょうがねえな…。」

犬夜叉はかごめの隣に横になるとこう呟き溜息をついた。
掛け布で少女の身体を覆うと、その頬にそっと口付ける。

静寂のなかに、こちこちと鳴る時計の音。
かごめの柔らかな寝息。
夜の闇に自らの黒髪と黒い瞳が溶け込む。

眠り姫の顔を見つめながら、静かに時の流れるのを待った。

月の無い夜。

妖力を失い無力な人間の姿になってしまう一夜。
いつもは、早く過ぎ去って欲しいと朝日を待ち焦がれていた残酷な長い時間。

だが強い妖怪のいない現代なら、心配する事は何も無い。
安心して無防備にかごめを抱きしめていられる。
爪や牙に気を使う事も無く愛し合える。

人間の姿をした自分を

嬉しいと思ったのは

朔の日にずっと夜が続いて欲しいと思ったのは

初めてだった。

愛しくて大切な、時間の流れにたゆたう。

どのくらい熟睡していたのか。
顔中に接吻の雨を浴びて、気が付いた。

「うん…。」

「待ちきれねえ…かごめ。」

耳元で犬夜叉が苦しそうに囁く。

「あんた、待ってたの？」

「当たりめえだっ！おれはまだ終わってねえんだっ！てめえ、一人でさっさと寝ちまいやがって。」

「だって…。」

「いくぞ。」

「あ…。」

両足を開かされ太股を捕まれて挿入される。
泉はまだ乾かずになみなみと潤っていた。

「…ああっ！」

まだ目覚めきっていない神経に激しい快感の波が襲う。

「あ…あんっ…。」

夢見ごこちの中、薄目を開けて揺れる彼を見ていたかごめの目が驚いたように見開かれた。

「あ…！」

思わず、息を呑みこむ。

カーテンに遮られてそれは見えないが、かごめは今まさに朝日が昇ったことを知った。

艶やかな黒髪の先から徐々に銀の光を帯びる。
暗闇になれた目に映るかすかな光を反射して放つきらきらとした真珠の輝き。
神秘的な世にも美しい光景を目の当たりにする。

昔、水平線に現れた朝日を初めて見たときの感動を思い出した。
一瞬ごとに揺れ移ろう色彩と光の奇跡。

彼の閉じた瞼が開かれた時、黄金がきらりと輝き太陽を直視してしまったように目が眩んだ。

生きた芸術の美しさに魅せられて全身に鳥肌が立つほどの興奮と震撼。

「あ…ああっ…。犬…夜叉…！」

「かごめっ…！」

起こされてよかった、と思った。

　なんて…

　　綺麗…