誓い














「ジューンブライド」



万能の神ゼウスの妃ヘラ(ジューノ)に由来して

花嫁は生涯幸せになれる・・・という伝承







常人ならぬ経験を経て、愛を貫いた可憐な少女が

愛する人との思いを添い遂げようとしている・・・



一人の幸せな花嫁の未来に・・・



今・・・誓う・・・





























「犬のにーちゃん!

 ねーちゃんの準備できたよー。

 控え室で待ってるから行ってきたら?」



「おぅ、かごめ。入るぞー」

 

美しい花嫁が顔を上げた。

白いベールを纏った幸せそうな花嫁は薄く頬を紅色に染め、愛する人の名を呼んだ。



「犬夜叉?」



「か、ご・・・め?」



透き通るガラス細工よりも繊細で優美な美しさはまばゆい光にも似て、

犬夜叉はかごめを凝視する事ができず、暫し言葉を失った・・・



「あいつ・・・あんなに色が白かったっけ?

 なんで、あんなにキラキラしてやがるんだ・・・

 な、なんでぃ、心の臓がドキドキしてやがる・・・」







「ちょ、ちょっと、厠(かわや)だ。

先に行ってろ、かごめ。」











犬夜叉は厠とは反対方向へホテルのロビーを抜け、裏手の雑木林の奥へと歩みを進めた。

高台に立つ郊外のホテルの裏手には街を眺望できる木々が連立している。

かつて、戦国の世を旅していた頃そうであったように、そのうちの一際高い立木にひらりと登った。



銀髪が艶やかな黒髪になり、獣の耳が失せる日。

地上の邪悪な敵から一人逃げ回っていた、あの頃からずっと・・・



この運命の少女との巡り逢いを待っていたような・・・



そして、一人二人と仲間が増えた頃からずっと・・・

この運命の日を信じて旅していたような・・・



あの頃・・・こうやって・・・かごめのことを考えていた。

否、桔梗の事・・・?

そうだ、俺は何度かごめの涙をみただろう・・・

何度かごめを傷つけたろう・・・



俺は・・・

俺は幸せになる資格があるのか?

かごめを本当に幸せにできるのか?



こんな弱っちい人間の姿になってしまって、

俺はかごめを守ってやれるのか?







「犬夜叉・・・あんたがどんな姿をしていたって、私は犬夜叉が好き。

・・好き・・・」

頭の中で木霊するかごめの声・・・



「そうだ、そうなんだ!」



「俺はかごめを幸せにすると誓った。

 だけど、かごめを必要としているのは俺のほうだ。

あいつが俺のそばにいるといってくれる限り。俺はあいつを守る・・・」



















そのころホテルでは大騒ぎになっていた。

まさか、新郎が疾走?(もとい)失踪?



「もうお時間ですが・・・」



一人落ち着いた美しい花嫁が呟いた。

「大丈夫・・・

犬夜叉は必ず迎えに来てくれるから・・・」

















木の上の青年・・・その憂いのある横顔は以前と変わらず、

しかし、顔を上げた静かな目は何かを決意していた・・・















「健やかなる時も、病めるときも、生涯これを守り、愛する事を誓いますか・・・?」



「・・・・・誓います。」



窮屈そうなグレーのスーツに身を包み、肩まで垂らした黒髪を照れ隠しに掻き揚げて
誓った言葉・・・



「誓います。」



その優しい手はそのまま美しい花嫁のベールを捲り上げた。



「では、誓いの口付けを・・・」



花嫁の頬に真珠のような涙が輝いた・・・











二人の門出を賛美するパイプオルガンが、静かなチャペルに心地よいほど優しい音色を奏でていた・・・
























合作スタッフ

小説:なおみ様
挿絵:かりん




<なおみさんのコメント>

かりんさんから頂きました素敵なイラストに感激し、僭越ながら「ウェディング企画」に管理人なりの「締め」を飾るつもりで書かせていただきました。
6月の花嫁に由来して、かごめちゃんには是非とも幸せな花嫁になっていただきたいと・・・
未来の雲行きが気になる二人の愛ですが、幸せな結末が待っていると信じたいものですvvv






<管理人コメント>

「新月のまどろみ」さまのウエディング企画にイラストで参加させて頂きましたところ、光栄にも管理人のなおみさんが小説をつけてくださいました!稚拙イラストが思いがけず合作作品となりましたvv^^

いつもと違うドレス姿のかごめちゃんを見た犬君の戸惑い。マリッジブルーというやつでしょうか^^。こんなときの犬君はやっぱり樹の上に行くのですね。そしてかごめちゃんはどんなときも犬君を信じています。静謐なチャペルでの二人の様子が目に見えるようですね。犬かごの未来にこんな日が来ることを心から祈りたいと思います。
なおみさん、素敵な小説ありがとうございました!(*^^*)


イラストについての言い訳を(^^;。

辛い恋を乗り越えたかごめちゃんなら、こんなシーンではきっと泣いてしまうのではないかと思いまして、犬君の見たうるうるしたかごめちゃんを描きました。^^少女漫画風でオリジナルが入ってます。かなり乙女ちっくになってしまいました(^^ゞ;。
かごちゃんのドレスのデザインは、シンプルなんだけどほんとはもっと凝ってまして、胸元に刺繍とかあしらってるんですけどうまく描けませんでした(^^;。(反省)

壁紙はペインターのパターン使って作りました。



なおみさんの小説サイト「新月のまどろみ」様には犬リンク1から飛んでいけます。^^





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