摘花
すべての命が覚めない眠りに落ちてしまったような、静かな夜。 灯りの無い小屋の中で、少年は少女を暖かく包みこむように抱きしめた。 「約束…したよな。」 少年は、かすれるような声でそっと囁く。 「覚えてるか…？」 少女は激しく騒ぐ胸の鼓動を感じながら、こくんと小さく頷いた。 「覚悟…出来たか？」 「…うん…。」 「おまえ、初めてなんだろ…。痛えかも…しれねえぞ？」 「う、…うん…。」 「いいんだな…？」 「…うん。」 少女の唇が塞がれ、貪るようにその舌を奪われた。 首筋に吸うように口付けながら、流れるように異国の服を剥ぐ。 ぱさりと、最後の布が落ちてすべてを露にされた少女は 抱き上げられ、床に敷かれた衣の上にそっと寝かされて、熱い肌に覆い被された。 唇と掌が、滑らかに少女の白い肌を這う。 手慣れた、優しい愛撫。 暖かい舌の自然な動きを、初心な身体で感じながらかごめは思う。 あたしは、初めてだけど… 犬夜叉は、初めてじゃ無いんだ…。 これは女の勘。 ざわっ、と、胸の奥が、凪いだ。 生きているときに…こうしたかった 犬夜叉に口付けをしてこう言った、桔梗。 たぶん、桔梗とは、何もしていない。 では、だれ？ 誰…？ この手で、この腕で、どんなひとを…抱いたの…？ どのくらい、生きてきたの？ 今まで、どれほどの女のひとと…出逢ったの？ どんな…恋を…したの…？ ああ、もうよそう。 過去にやきもちを焼いても、仕方が無いわ。 犬夜叉の右手が、かごめの最も秘めた部分に届きそっと弄る。 「あ…！…や！」 思わず、閉じかけたかごめの足が 彼の足に阻まれ、絡め取られて、開かされた。 「きゃっ…！」 「もう、止められねえぞ…？」 「あっ…！」 いい…わ。 今…いまは… あたしの事だけ想っていてくれれば… それで、いいわ。 あたしの…ことだけ…？ 犬夜叉… 今、あんたの心の中にいるのは、あたしだけ…？ 桔梗は…いない…？ どうなの？ あたしを抱きながら…桔梗の事も想っていたら… どうしよう… ちょっとでも…桔梗のこと…想ってたら 桔梗を忘れることが出来ない、優しい犬夜叉 やさしすぎる…ひと。 あたしは、そんな優しいひとを 好きになってしまった。 だから、それも、仕方が…無いわ… 胸の奥底に刺さっていた鋭い氷のような冷たい何かが、きゅんと、疼いた。 男のひとを好きになることが こんなに切ないなんて こんなに…つらいことだったなんて あたし あんたに出逢うまで…知らなかった あんたを好きに…なるまで 知らな…かった 知らなかったのよ…？ 犬夜叉… 「泣いて…るのか…？」 「あ…。」 「いや…なのか…？」 「…違う…わ…。」 「…どうした…？」 「目に、塵が…入っただけ…。」 「ほんとか…？」 「…うん…。」 犬夜叉は、かごめの瞳からこぼれたひとしずくを唇で拭い 更にあふれた雫も、舐め取った。 「大丈夫か…？」 「大丈夫…。」 犬夜叉… あんたは 切なさも 悲しみも 喜びも 幸せも その暖かさも たくさんのものを あたしにくれるのね やがて彼の指が、蜜に濡れた花弁を開き 硬い何かが、あてがわれた。 「…入れるぞ…？」 「あ…、うん…。」 胸が鳴いて、身体がすくんだ。 「もっと…ちから抜け…。」 「う…ん。」 「怖いか…？」 「…ちょっと…。」 犬夜叉の腕が、震える華奢な肩をそっと抱きしめる。 少女は、瞼を閉じた。 可憐な蕾は、開かれ 艶やかな花が、咲く 唯ひとりの、いとしいひとのために。 そして |
| （終） |
＜コメント＞ 「摘花」（つむはな）読んでくださってありがとうございます＾＾。 これは、02年の12月に書いたものです。 「約束」の続編ですので、「犬夜叉の井戸」さまに差し上げました。＾＾ こちらでは公開するつもりは無かったのですが、読者様にしてみればひとつ所に置いてあるほうが親切だし便利だと思うので、こちらにも置かせていただきます。 「犬夜叉の井戸」さまでは大人向けのページにおいてくださってるのですが、迷ったのですが、かなりソフトな内容ですし＾＾、こちらでは表に置かせていただきます。 「犬夜叉の井戸」様には犬リンク１から飛んでいけます。綺麗な壁紙つけて飾ってくれてますので、よかったらあちらでもお楽しみください。 |